現役エンジニアが解説 ゲームエンジンはなぜ必要なのか

 スマートフォン向けのアプリの2つに1つはあるツールで制作されています。使用されているツールはUnityと呼ばれるゲームエンジンです。ゲームエンジンを使用すると便利で効率よく開発を行えます。執筆している私もゲームエンジンを利用して開発を行っています。今回は現役のエンジニアがゲームエンジンを利用する開発の特徴を解説していきます。

そもそもゲームエンジンとは?

 Wikipediaではゲームエンジンはこのように説明されています。

ゲームエンジンとは、コンピュータゲームのソフトウェアにおいて、共通して用いられる主要な処理を代行し効率化するソフトウェアの総称である。ゲームエンジンは映像や音のリアルタイム処理をしていることもあり、インタラクティブアートなどの分野でも使われることもある。Unityのようにエコシステムを生み出したゲームエンジンもある。また、ゲームエンジンを模倣するAIも発表されている。

引用:Wikipedia – ゲームエンジン

要は簡単にゲームをつくれるようにしたツールです。ゲームというのは下の例のように共通する要素が多いです。

・キャラクターの操作

・物の落下(重力表現)

・物の当たり判定

・ゲーム素材の管理機能

他にも多くの要素がありますが伝えたいことは「ゲームの基本的な部分をすでに作っていてくれている点」です。開発の世界ではすでにある技術を使用せずに0から作り直すことを車輪の再発明と呼ばれています。車輪の再発明は開発の現場では悪しきものとされており、効率よく開発が行えるゲームエンジンの利用は多くの開発で利用されています。

ゲームエンジンを利用するメリット

 具体的にゲームエンジンを利用するメリットを述べていきます。

ゲームに必要な機能がまとめられている

 通常の開発は0から機能ごとに個別にプログラミングを行っていきますが、ゲームエンジンは必要であろう機能は部品としてゲームエンジン内で提供されているため、部品を組み合わせていくだけである程度の機能は構築できるようになっています。

 そのためゲームエンジンを利用した開発では、ゲームエンジン内で用意された部品以外の足りない領域のみをプログラミングするだけで良いので効率よく開発が行えるというわけです。

開発を行える環境構築が簡単

 環境構築には時間がかかるものです。言語ごとに開発に必要なファイルをダウンロードし環境変数を設定し、専用のエディタを入れ…1日使うつもりで行います。しかし、ゲームエンジンは専用のインストーラーを実行するだけであらかたの構築を完了してくれます。

ビジュアルプログラミングが利用可能

 はじめてプログラミングを行う初学者の場合、プログラミング言語を習得するためには言語の文法を学ぶ必要があります。そのため習得までの難易度が高く、専用のプログラミングスクールも存在するほどです。私個人としても、プログラミングの敷居を下げて気軽にプログラミングを行えるようにする良い方法はないかなと考えたりもしましたがビジュアルプログラミングはまさにその「プログラミングの敷居を下げる」ことができるプログラミング手法です。非プログラマーも行えるのも嬉しいです。

1つのプロジェクトで様々なOSにビルドが可能

 ゲームエンジンはパソコン以外にもスマートフォンやWEBなど様々なOSや環境に対してビルドすることが可能です。ビルドしたアプリケーションは専用のストアを通じて配布することが可能です。通常、複数のOSにアプリケーションをリリースしようとした場合はOSごとに個別にアプリケーションを作成する必要があるため、1つのプロジェクトで複数のOSをカバーできることは実際の開発で非常に重宝されます。なお、複数のOSや環境に対応することをマルチプラットフォームと呼びます。

素材(アセット)の管理が行いやすい

 ゲームエンジンには視覚的にファイルを管理することができるフォルダ管理機能が搭載されています。階層ごとにファイルを格納することでファイルを整理する機能の他に、強力なファイル検索機能も搭載されているため大規模なプロジェクトになり数千や数万のファイル数になっても管理することが可能です。また、ファイルごとに生成したいアプリケーションに合わせて最適な設定作業もある程度はゲームエンジン内で行えるため作業工数の短縮にもなります。

専用のストアから、開発に役立つ素材を利用できる

 ゲームエンジンを提供する会社ごとにゲームエンジン内で利用することを想定した素材を有料/無料で入手することができる専用のストアが存在します。専用ストアの素晴らしいところは商用利用が可能なため安全に商用アプリケーションに組み込むことができます。また、年々ストアに並ぶ商品のクオリティが上がっており最近では高クオリティの素材が格安や無料で入手することができ開発が行いやすくなっています。

無料で利用可能

 条件はありますが、無料で開発を行うことが可能です。Unityの場合は個人向けの無料版と、企業向けの有料版があり、学習のための利用などの場合には、無料版を使用できます。個人向けの無料版でも、アプリ開発をするために必要な機能は備わっており、アプリ開発には問題なく使用できることでしょう。長年開発している私でも無料版でも問題なく開発を行えるぐらい機能が揃っています。

様々な外部デバイスを利用しやすい

 特殊な機材を利用したアプリケーション開発でもゲームエンジンは利用されます。バーチャル技術の場合、VRやARの技術に合わせて専用のゴーグル型ディスプレイを使用します。アプリケーションとゴーグル型ディスプレイなどのハードウェアを接続するためのプログラムは専用のプログラムが必要になりますが、専用のプログラムはハードウェアを販売している会社が提供することが通常です。なお、このようなアプリケーション開発を補佐するプログラム群をSDK(ソフトウェア開発キット)と呼びます。SDKは開発環境ごとに使用可能かどうかがまばらであり対応していなければ使用することができません。こういった外部デバイスのSDKはゲームエンジンに対応していることが業界のスタンダードになっているため、外部デバイスの利用するアプリケーションにはゲームエンジンが利用されやすいです。

あえてゲームエンジンを利用しない開発

 ゲームエンジンはゲームをつくるために開発された開発環境です。そのため、非ゲームなアプリケーションだとゲームエンジンに用意された機能を使用する必要がないためゲームエンジンを利用するメリットが低くなります。

 また、視覚的に操作できるということはマウスでの操作が多くなります。早くプログラミングを行うコツとしてキーボードのみで操作するというものがあり、マウス操作が必須なゲームエンジンでは多少コードを記述するスピードは落ちます。他に、他人と環境を共有する場合に、プログラマーのみの場合はゲームエンジンを利用せずに文字のみのプロジェクトのほうが意思伝達が早かったりもします。

 最後にライセンス料金も利用しない選択肢になるでしょう。一定の売上がある企業の場合はライセンス費を支払う必要があり、ゲームエンジンを利用する人数分のライセンス費が必要になります。Unityで最も高いライセンス費はプロ版の年24万円です。

ゲームエンジンでアプリ開発をしてみませんか

ここまで、ゲームエンジンでアプリ開発をするメリットや理由ついて紹介してきました。

ゲームエンジンは、リアルタイム開発プラットフォームで、ゲームなどのアプリ開発のための、便利な機能が豊富にあり、正しく利用すれば効率良く高品質なアプリケーションを開発できるはずです。。

この記事を読んで、ゲームエンジンについて興味を持った方は、ぜひゲームエンジンを使用してアプリ開発に挑戦してみてください。

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